強迫性障害とは
強迫性障害もパニック障害と同様に不安障害のひとつです。これは頭の中では無駄な行為であると患者さまご自身も理解しているのにも関わらず、その状況が繰り返し脳内に浮かんでしまう(強迫観念)ことで、その行動を繰り返さずにはいられなくなる(強迫行為)状態を言います。
上記のような症状がある場合、すでに強い不安やこだわりが日常生活にも支障をきたすようになっていて、強迫障害は常に不安が根底に存在しております。またこのような強迫症状は、うつ病や統合失調症といった患者さまにもみられることから、しっかり鑑別していく必要があります。
強迫性障害でよくみられる症状(例)
- 汚れや細菌汚染を恐れて何度も手洗いや洗濯、入浴などを繰り返す
- 何度も何度も窓や玄関のカギ、ガス栓、電気器具のスイッチなどを確認する
- 誰かに危害を加えたのではないかと心配になり、通って来た道を戻って確認する
- 自分の決めた回数や手順に沿って物事を行わないと不安になり、それに従う
- 物の位置や左右対称性、数字などにこだわりがあり、それから外れると不安になる など
発症の原因について
発症の原因に関しては、現時点では完全に解明されていません。しかし最近になって、脳内の神経伝達物質のひとつでもあるセロトニンの代謝が関係しているという説がさかんに言われるようになりました。ちなみに脳内には実に多くの神経細胞が接続しながら情報を伝達しているわけですが、その接続部分をシナプスと呼び、そこで情報を伝達する物質が神経伝達物質なのですが、その一つがセロトニンなのです。なおシナプスには、神経細胞から放出され自由に活動できるフリーセロトニンが存在するわけですが、強迫性障害の患者様の場合、このフリーセロトニンの量が少ないと考えられています。
また強迫障害は好発しやすいタイプとして、几帳面、完璧主義といった性格(強迫性格)の方がなりやすいと言われています。なお発症しやすい世代については20歳前後が最も多く、男性の方が早い年齢で発症する傾向(日本での平均発症年齢は、男性22歳、女性24歳)にあると言われています。なお女性が発症するきっかけは生活の変化(結婚、出産 など)が多いです。
治療について
患者さまにみられる特徴的な症状をみて医師が判断します。その結果、治療が必要となれば薬物療法と精神療法を組み合わせて行っていきます。
薬物療法では主に抗うつ薬のSSRIを使用しますが、症状が強く出ている場合は抗不安薬を用いることもあります。さらにこれらと併せて精神療法として曝露反応妨害法も行っていきます。これは、認知行動療法の一種でもあるのですが、その内容は強迫症状が出やすい環境をあえて用意し、その場に患者様を直面させることで刺激を与えるというものですが、不安が自然に消えるまでその刺激を強くしていき、その環境に慣れさせるという精神療法になります。